NOT A BOX はこ・じゃ・ない

 ダンボール箱のどこがそんなにおもしろいの?――大人はそんな思いで眺めてしまうけれど、当の本人にしてみればこれほど心うかれる「おもちゃ」はないらしい。箱に乗り込んだり、中に隠れたり、子どもは箱を「何か」に見立て、イマジネーションの世界にとっぷりと浸かる。
 彼らの気持ちを知る人なら誰もが共感できるおなじみの光景が、『Not a Box』(邦訳『はこははこ?』)にはたっぷり詰まっている。何しろ、絵本の装丁からして厚紙を想起させる茶紙。というわけで、この手触りがまず心地よい。箱らしさを出すため表紙に「NET WT. 11.5 OZ.」なんて重量表示する遊び心がかわいいなと思った。見返しも茶紙で、中身にはその薄茶色を基調に、赤、白、バニラクリーム色、チャコールグレーのような黒で、うさぎぼうやのイマジネーションワールドが繰り広げられる。現実の動作が黒、見立て遊びの光景が赤の線で描かれ、この違いを見ることが小さな読者の楽しみになる。シンプルでデザイン的だけどのんびりとした雰囲気をかもしている理由は、ぷくりとした太線にあるんだろうなあ。
 お母さんの問いかけとうさぎぼうやの応えで続く、親子の会話があたたかい。ページをめくるごと、にんまり笑顔を見せる娘を見ているのが、また格別に楽しかった。(asukab)
amazon:Antoinette Portis

  • To children everywhere sitting in cardboard boxes!

はこははこ?

はこははこ?