ハマグリ

 ばたばたと慌しい。予定表に書き込む項目は一日ひとつと決めているけれど、重なってしまったときはハマグリになったつもりで臨む。殻を閉じてのスルー力。別名「こなし力、やっつけ力」。子どもが学校に通い出してから感じ始めた「感覚」だ。
 このスルー力が発揮されるときは、見てのとおり誰ともコミュニケーションする気持ちになれない。誰かと話していても表面だけのことであり、殻を開いて話しているわけではない。つまり、親とか学校を通してのお付き合いとは、結局そんなものということになる。腹を割って話す相手は、家族以外誰もいない。これって変わっていることなのかしら。幼少期から内と外の差が激しかった自分が、親になりさらにその差を広げている。
 ただ殻を閉じていると、人間的成長も止まってしまう。でも、今は閉じているしかない。煩わしい関係は一切排除して、内側で家族、子どもとの日々を楽しむことにしている。殻を開くのは、老後。