Pierre in Love 恋するピエール 恋の絵本

 バレンタインにぴったりの、すてきな恋の絵本を見つけた。『Pierre in Love (Golden Kite Awards)』には、漁師ピエールとバレエ教師キャサリンの恋がユーモラスに描かれる。
 ピエールは、キャサリンに恋している。彼女のことを考えると夜も眠れず、「アスピリン」とか似たような言葉を聞くだけでも心がとろけてしまった。可憐で、きれいで、漁師の自分とは正反対。一度も話をしたことがなかったけれど、いつも海から彼女の姿を追っていた。ある日、ピエールは一大決心をする。美しい巻貝が網にかかったので、キャサリンにプレゼントしようと思い立ったのだ。入念にシャワーを浴びて、真っ赤なシャツを身にまとい、髪とひげを整えたら、見違えるほど。リボンをかけた巻貝を手にキャサリンの家を訪ねたはいいけれど何を話したらいいのかわからず、結局ドア元に置いてくるだけに終わってしまった。それからというものピエールは毎夜のごとく、贈り物を届けた。野ばらの花束、流木、海草で作ったハート型リース、バケツ一杯のカキ……。贈り物を受け取り心が弾んだキャサリンは、ある夜、贈り主をつきとめようと茂みの影に隠れてピエールを待ち伏せをする。突然、暗がりから飛び出したキャサリンを目の前に、ピエールはおののくが、今言わなければ一生言えないと直感し、「I love you」の気持ちを伝える。ところが、彼女の返事は「愛している方がいるのです」――。(書きながら、思わずシェイクスピアのラブコメディのあらすじを書いているような気分に浸る。)
 恋の絵本とは子どもたちに縁が薄いかなと思ったのだが、なんのなんの、息子も娘も息を呑んでピエールの恋の行方を見守った。喜歌劇風な古典的恋愛の展開に、ユーモラスなイラスト*1,*2が添えられて、なんだかわくわくしてきてしまうのだ。うふふ、そのとおり! 彼らが結末を言い当ててしまい、途中からみんなで、クスクス、ゲラゲラ、笑いの渦だった。ピエールのいでたちが「いかついあんちゃん」を想起させてくれ、そこも楽しかった。ねずみ(しかもラットの方)のピエールとうさぎのキャサリンを人間に置き換えてキャラクターを想像すると、すごく愉快。
 「恋」って、子どもにとってもうれしいものなんだなあと実感した。(asukab)
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  • お決まりバレンタイン絵本になる予感がするよ

Pierre in Love (Golden Kite Awards)

Pierre in Love (Golden Kite Awards)