14ひきのぴくにっく 春の自然がいっぱい

 二月のシアトルは一気に、春らしさを増す。中旬を過ぎる頃からクロッカスの芽が庭に点り、春らしい穏やかな気分に包まれる。そこで開かずにいられない絵本が『14ひきのぴくにっく (14ひきのシリーズ)』。ぜんまい、すみれ、やまぶき、つくし、たんぽぽ、あかつめくさ、なずな――ここには日本の田舎の春がいっぱいつまっていて、ピクニックにでかける14ひきを追うだけで野原の日差しを受けているような気持ちになれるのだった。
 絵本に触発されて思い起こせば、近所の友だちや祖母といっしょに、たんぽぽたまご焼きを作ったこと、花輪を飾ったこと、花の蜜を吸ったことなど、幼い日の記憶はとどまるところを知らない。ぽかぽか陽だまりのあの空気のおかげで、記憶が柔軟になるのかもしれないな。そしてもちろん、絵本のおかげでうきうきした気持ちも戻ってくる。お弁当持って、ピクニックにでかけなきゃ。いつの間にか、そんな気持ちになっている。
 ローカル色豊かな絵本に、心から感謝したい。自分の生きる場を子どもたちに伝えることが絵本作家の仕事だと思うので、シリーズを通し鮮やかに使命を果たしている作者に敬意を表す。(asukab)
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  • 書影がないので、英語版で