Lucia and the Light 北欧ルチア伝説をもとに描く絵本

 季節はずれの絵本レビュー。ルチア伝説をもとに描く絵本『Lucia and the Light』(邦訳『おひさまは どこ?』)は、雪と氷に閉ざされた北欧の冬を舞台に、太陽を取り戻そうと旅に出た女の子ルチアの勇気を描く。伝説・風習をもとにした物語はあらすじがわかる分、展開がむずかしいのではと思ったが、随所で表現力に引き込まれ、いつの間にか美しく厳しい冬の旅を味わっていた。本作品の魅力は文章力もさることながら、イラストの効果も大きいだろう。米国版ハリー・ポッターで見せた画家の深みあるパステル画がここにも生き、「光」「勇気」「愛」の三大テーマが巧みに表現されている。
 ところで、絵本を読む前に抱いていた疑問がある。ナポリ民謡「サンタルチア」と北欧ルチア伝説のつながりだ。スウェーデンノルウェーで女の子たちが「サンタルチア」を歌いながら聖ルチア日*1(12月13日)を祝う光景は、南北の組み合わせにぴんとこず、常々不思議に思っていた。でも、調べてみたら何ということはない。北欧にキリスト教が普及する10世紀頃から、土着の冬至祝祭とナポリの殉教者・光の聖女ルチア*2が融合し、聖ルチア日になったということだった。光を求める冬至(「光の祭典」)に、光の守護聖女の存在を祝うのである。現在のように、女の子たちが白いドレスを着てろうそくを頭につけ家々を回る習慣は、16世紀にドイツから伝わったらしい。
 イラストのルチア*3だが、目の色がヘーゼルで、なんとなく南欧の女の子っぽく見えた。イタリアを意識しているから? お母さんもヘーゼル、でも弟はブルーになっている。北欧というと金髪に青い目の印象なのだけど、これは偏見かなあ。(asukab)
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Mary GrandPré

  • 化け物トロルも出てくるよ〜

Lucia and the Light

Lucia and the Light

*1:http://www.scandinavica.com/culture/tradition/lucia.htm

*2:304年12月13日に処刑。光・眼病治癒の守護聖女

*3:英語の発音はルシア