TERRIBLE STORM 1888年の冬をおじいちゃんたちが語る絵本

 『Terrible Storm』は、作者*1の二人のおじいちゃんが語る実話を描いた絵本である。ときは1888年、暖冬のまま春を迎えるのかと思えた三月半ば、突然の大雪が東部ニューイングランド、ニューヨーク地方を襲った。雪は三日間降り続き、記録的な豪雪となる。
 家のポーチで椅子にもたれ、「あの冬」を振り返るのは、ウォルトおじいちゃんとフレッドおじいちゃんの二人。

「おまえ、あんとき どこにいたかね」
「最悪の場所じゃよ」
「わしもじゃ」

 まさかこんな大雪になるとは誰も想像していなかったから、ウォルトおじいちゃんは薄手の上着と帽子だけ、フレッドおじいちゃんはブーツもスカーフもなしで、それぞれまきを運び、牛乳を配達していた。そこに雪が降り出して、どんどんどんどん降り積もっていく。このコマ割りで描かれる光景は、なかなかの見もの。時間を追うごとに雪の深さが確認でき、しんしんと降り続ける雪がそのまま体験できる。結局二人はそれぞれ農場の納屋と人がひしめく宿屋に三日間閉じ込められることになり……。
 さぞかし大変なできごとだっただろうけれど、お話として聞くにはとても興味深い。加えてビクトリア朝ニューイングランドを描くイラストが繊細で、同時におもしろおかしく、なんと魅力的なこと! というか、難儀なできごとだったことはもちろん理解しているのだけれど、それがユーモラスに描かれるので、非常に引き付けられる昔話になっているのだ。冒頭を除きすべて会話で進む設定も愉快だなあ。いったいどんな話し振りなのか、想像すると笑いがこぼれてしまったり。会話の読み方しだいでさらなる魅力が生まれる絵本だ。作者の(たぶん)母方、父方二人のおじいちゃんたちが小さな頃から友人同士だったという設定も、なんだか田舎の小さなコミュニティーを象徴しているようで楽しかった。 
 春を待つ夜に、家族みんなで読んだ絵本。もしかしたら、こういう大雪に襲われる可能性はまだあるわけで……。状況を思い描くと時期的にぴったりの作品だ。
 ちょうどこの作品が出版され高く評価されていた頃、作者が亡くなったという記事を読んだ。教員として活躍した彼女の社会貢献は、ウェブサイトで十分に知ることができる。She'll be remembered fondly by students, teachers and book lovers. (asukab)
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Terrible Storm

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