The End おしまいから始まる愉快なおとぎ話絵本

 読みながら久しぶりに歓声を上げて笑った絵本が『The End』(邦訳『めでたしめでたしからはじまる絵本』)です。なにしろお話が、ふつうなら「めでたし、めでたし!」で終わる場面から始まるのですから。それは、こんな感じです。
 まず、表紙裏見返しに、お城を後にする登場人物たちの列。次の中表紙にはお城の木戸に掲げられた「おしまい」のお知らせ。そして、物語の始まりには、お姫さまと騎士が結婚式を挙げ幸せに浸る場面が描かれています。しかし絵本ですから、お話は間違いなくここから始まるのでした。それは、こんな感じです。
 「そして、みんなしあわせにくらすようになりました。――どうして、しあわせにくらすようになったのかというと……」(で、次のページに進みます。)「びしょぬれの騎士が、かしこいお姫さまに恋をしたからです。――どうして、騎士がお姫さまに恋をしたのかというと……」(次ページへ)「お姫さまがカップいっぱいにはいったレモネードを騎士の頭からそそいでしまったからです。――どうして、レモネードをそそいでしまったかというと……」(次ページ)「騎士のひげがぼうぼうと燃えていたからです。どうして、ひげが燃えていたのかというと……」。こうして、何が起きてどうなったのかの「結果」と「原因」を追い、物語は無事最後までたどりつくのでした。
 奇想天外な展開も去ることながら、その突拍子もない筋をしっかりと笑いで支えるイラストにも注目です。輪郭線と背景の描かれ方が、ほんの少しセンダック――たとえば『まよなかのだいどころ*1――のように見え、まじまじと見つめてしまいました。
 お姫さま、お城、ドラゴン、巨人……と、おとぎ話の夢とロマンがたっぷりで、娘も大満足でした。おしまいから再話するのもおもしろいです。「本当ならこういう展開のお話なのにね!」という風に。(asukab)
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  • 娘とわたしのお気に入り登場キャラクターは、(表紙では見えないけれど)まるまる太っちょのトマトさん 

The End

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