MEOW RUFF: A Story in Concrete Poetry 文字の視覚イメージと詩に遊ぶ絵本

 詩の絵本といっても、『Meow Ruff: A Story in Concrete Poetry』にはストーリーがある。主人公は犬と猫で、この二匹を取り巻く光景が、文字と言葉によるイラストで表現される。
 こういう表現法をアートではなんと言うのだろう。空の雲は、綿雲のようなふんわり太っちょな活字体で「wisp」「just a tiny puff, a swirl of frosting-cloud」という文字のかたまりになってふわふわ浮いている。家のドアや車のドアには四角張った太ゴシック体で「DOOR OPENING」「OPENING DOOR」と書かれている。雨粒は天から落ちる水滴となって一文字ずつ縦方向に文字間隔を置いて、「d r o p」「d r i p」だ。言葉や表現がすべて背景アートに入り込み、音の響きと視覚イメージに遊ぶ絵本が本作品と言えるのかな。そういえば詩人の過去の作品*1,*2も、この絵本ほどではないにせよ活字と遊んでいた。
 字体が長細すぎたり、色が薄かったりで読みにくい箇所もあるけれど、イメージ遊びにはもってこいの絵本かもしれない。一文字にそれぞれの意味を宿す漢字では、こういう試みはできないだろう。記号としてのアルファベットが、活字にまとうドレスを変え、それぞれの状況に並び、言葉として意味を生み出すからこそ遊べるのだと思った。娘は犬と猫の友情物語を喜んで見守った。(asukab)
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  • これはデザイン調――娘の好きそうなキャラクター調――のグラフィックだけど、手描き風など異なるタイプのイラストでもおもしろかったかもしれない

Meow Ruff: A Story in Concrete Poetry

Meow Ruff: A Story in Concrete Poetry