カーニバルのおくりもの

 『カーニバルのおくりもの (世界傑作絵本シリーズ―アメリカの絵本)』(原書『Harlequin and the Gift of Many Colors』)は大斎節(レント)前に読んでおくべき絵本でした。とはいえ、レント期間中に開いても、十分に春を待つ雰囲気が伝わってきます。絵本には、こんなふうに「カーニバル」の説明がされています。

 カーニバルは、キリスト教のおまつりです。キリストは
十字架にかけられ、三日のちによみがえりました。
その復活を祝うのが復活祭(イースター)ですが、復活祭のまえの
四十日間は、キリストの受けた苦しみをしのんで、肉ぬきの質素な
食事をとり、祈りをささげます。そのまえにごちそうをたべ、
思うぞんぶんさわいであそぶのが、カーニバルです。

 主人公の男の子は、ハーレキンと言います。カーニバルを前に子どもたちはみんな浮かれていましたが、彼一人だけがしょんぼりしていました。新しい服を着て仮面をつけ楽しく過ごすのが、カーニバルです。でもハーレキンの家は貧しくて、服を準備するお金がなかったのでした。元気のないハーレキンを励まそうと子どもたちがアイデアを出し合い、それぞれ余った服のはぎれをハーレキンにプレゼントすることになりました。
 ハーレキンとは、コンメディア・デラルテ(commedia dell'arte)*1に出てくる道化役の下男です。ひし形の多色まだら模様の衣装と黒い仮面をつけていますが、「むかし、イタリアの喜劇に はじめて 登場したときは、 ふぞろいなきれを いっぱいぬいつけた、つぎはぎだらけの衣装をきていたそうです――」。*2つまり、絵本はハーレキンの色とりどりの衣装がどういう経緯をたどって生まれたのかを語るお話なのでした。
 鮮やかな服を身にまとい、しあわせそうに広場で飛んだり跳ねたり踊ったりするハーレキンの姿が目に浮かんできます。カーニバルの様子が生き生きと描かれ、読者にもうれしい気持ちが伝わる絵本です。(asukab)
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  • 表紙、見返し、裏表紙が即興喜劇の設定で洒落ています。色彩感覚をくすぐるタイトルなのに、書影がなくて残念

*1:16-18世紀イタリアの即興喜劇。筋書きだけで演じられ、決まった名前、衣装、性格の人物が登場する。

*2:「」内は、絵本より引用