Winter Afternoon お母さんと子どもの喜び

 人差し指で曇りガラスに絵を描いて、ひんやり冷たくなった指先などまったく気にもせず、あっという間に曇りを拭ってしまうお絵かきは子どもが大好きな遊びです。透明になった部分から見える向こう側の世界をのぞくことも、ちょっとした楽しみだったり。スペイン語(英文併記)の絵本『Tarde de invierno / Winter Afternoon』には、そんな子どものときめきが母親を慕う気持ちといっしょにささやかに描かれます。
 何度も読み返し、なんてすてきな発想なのだろうとしばし感嘆。お母さんがお出かけして戻ってくる、日常のちょっとしたできごとの描写なのですが、曇った窓ガラスに描いたお月さまから外をのぞき帰りを待ちわびる情景がしんと心に染み入りました。その子のうれしい気持ちがまっすぐに伝わってきて、素直で、かわいらしい視点がたまらなく愛しい。
 イラストを描いた画家(Mandana Sadat)がこんな献辞をしています。

この世界でもっとも美しいもののひとつ「母と子の愛情」を描く機会を与えてくださった詩人(Jorge Lujan)に

 「もっとも美しいもの」に同感です。画家のたたえる「母と子の愛情」が、冬の陽ざしのようにやわらかく読後を包みます。なんだか七十年代風のイラストに見えて、そんなノスタルジーもあるかもしれません。(asukab)
amazon:Jorge Lujan
amazon:Mandana Sadat

  • 四月に入り冬日が続いているので、読むのにはぴったりだったかも

Tarde de invierno / Winter Afternoon

Tarde de invierno / Winter Afternoon