Clancy: The Courageous Cow どすこい! クランシー

 現役大学生が作者というオーストラリアの絵本『Clancy the Courageous Cow』を読んで受けた。牛の種族間で行われるレスリング大会――日本流なら「おすもう大会」――が愉快。
 お話は、代々おなかに白帯模様が入るギャロウェイ種の牛夫婦に、帯の入らない赤ちゃんクランシーが生まれたところから始まる。一匹だけ違う子どもが生まれるストーリーはよくあるプロットなので、これもそんな作品かと思ったけれど、そうじゃない。同じ牧草地には、赤毛ヘレフォード種が住んでいて、両種族は年に一回レスリング大会を開き、勝ったほうが栄養たっぷりの牧草地域で一年間過ごせることになっていた。ギャロウェイ種は毎年戦いに負けるものだから、どんどんやせ細る悪循環が続く。ヘレフォード種がどんどん太って強くなる一方で、ギャロウェイ種は小さく弱弱しくなっていた。さて、そこに白帯のない真っ黒のクランシーが登場する。体が真っ黒なため、夜、ヘレフォード種の牧草地で栄養たっぷりの草を食べていても、誰にもわからない。単純な理由からクランシーは力強く成長し、ついにはレスリング大会で栄冠を勝ち取ることに……。
 作者は幼少時、牧場で牛に囲まれ過ごしたというから、このコミカルなお話は実体験から生まれたことがよくわかる。ちょっぴり子ども的発想が入り込み、その風味が効果的にストーリーに織り込まれ独自の魅力を放つ。牛のことがよくわかっていて、牛の表情が読み取れる作者ならではの絵本という感じかな。個人的に、オーストラリアの大平原を思い出すだけで、なんとなく笑いのこぼれる絵本でもあった。最後は、子どもも納得の帰結だと思う。ほんとうに、そのとおりよね!(asukab)
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  • 動物ものって、おもしろいなあ……とあらためて感じた絵本

Clancy the Courageous Cow

Clancy the Courageous Cow