On Meadowview Street メドービュー・ストリートのおうち

 一見、表紙から『On Meadowview Street』のよさはわからないだろうなあ……というのが第一印象。米国の画一的な宅地開発にさらりと触れて、小さな庭作りから広がった生態系を賛歌する秀作絵本だった。
 新しい家に引っ越してきたキャロラインは、住所が「メドービュー・ストリート(日本語なら、緑が丘通りかな)」にもかかわらず、草地などどこにも見当たらないことに気づく。――冒頭のこの光景は、典型的な郊外の新興住宅地を描いている感じ。同じ形の家がずらりと並んでいて、去年観た映画"Over the Hedage"(日本語版は『森のリトル・ギャング スペシャル・エディション [DVD]』)を思い出した。ふと芝生に腰を下ろしたら、桃色の小さな花が揺れていた。「わ、きれい!」。キャロラインは花を柵で囲み、自分だけの庭を造った。少し離れたところにもう一輪花が咲いていたので柵を広げ、芝刈りする父さんの傍らで庭はどんどん広がっていく。そうすると蝶々や虫がやってきて、生き生きと自然の世界が輝き出した。芝刈りを難儀と感じていた父さんはキャロラインの庭を歓迎し、母さんもいっしょになり、木を植え、池を作り、豊かな緑の生態系が誕生した。
 父さん、母さんがキャロラインの気持ちを理解して、家族みんなで自然に帰ろうと心一つにする場面がすてきだった。父さんなんて、芝刈り機を売りに出してしまうほど。ゴルフ場のように人工的に整備された芝生の庭もきれいだけど、エコロジーの真の姿を求めるとしたら、キャロラインの作った庭になる。それは小鳥や小動物たちが証明してくれて、そこにはたくさんの生き物が集まってきた。文字通り、「メドービュー・ストリート」と化していく過程に心が躍った。イラストが特別魅力的というわけではないのだけど、さわやかな気持ちが味わえた。(asukab)
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On Meadowview Street

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