The Story of Coffee コーヒーのお話

 バイオリンの帰り、息子といっしょにスターバックスに立ち寄った。とてもいいレッスンだったので、ちょっと奮発。彼はマリオンベリー・マフィン、エッグ・ソーセージ・マフィンにデカフ・モカ、わたしはオレンジ・モカを頼んだ。もともとお茶党なのだけど、コーヒーの芳ばしいアロマには体がほろんと反応してしまう。大きなソファに抱っこされ、この香りに包まれると夢心地だ。
 家に戻って『The Story of Coffee』を読み、お店にこの絵本が置かれていたらいいのに……と思った。作者はエチオピアからシアトルに移民した画家で、公立中学校で美術を教えている。ラッテランド、シアトルならではの絵本だから、スターバックスタリーズ・コーヒーにぴったりじゃないかな、と。エチオピアでは来客があると、豆を鋳るところから始め、入れるまでに2時間かけてコーヒーを振舞うそうだ。茶道よりも手間をかける儀式に、心引かれるなあ。
 絵本はコーヒー(もともとは、Keffaという地名)の由来を伝える素朴な作品だ。ヤギ飼いの少年がヤギが茂みで食んでいた豆を持ち帰ったところから、コーヒーが誕生する。お母さんが食べてみると、苦くて味わえたものじゃない。焚き火に放り込んだところ、甘い香りが漂い始め、砕いて口に入れてみると今度はいけた! ローストする場面は単純な描写なのだが、コーヒーの香りがあたりに立ちのぼるかのようである。これを飲み物にして評判が広がり、あとは歴史が物語るとおりだった。
 味わい深い輪郭線と、塗りムラから生まれる色の表情が魅力的な絵本。アフリカの風土を伝承する民族調のイラストに温もりが満ち、表紙を眺めるだけでも落ち着けるから、ほんと、カフェにぴったりではと思う。(asukab)
amazon:Sultan Mohamed

The Story of Coffee

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