Lucky Jake ゴールドラッシュ時代の生活がしのばれる絵本

 『Lucky Jake』には、カリフォルニア州の金鉱に暮らした父子の生活が描かれます。金塊を売ったお金で手に入れたこぶたをきっかけに、日々の暮らしが少しずつ好転していくのですが、この様子が「こりゃあ、ついてたな」のかけ声に象徴されながら語られていきます。
 目の前にあるもので精一杯の生活に、選択肢などありません。にもかかわらず雄大な自然に囲まれ送る慎ましい日々は、一日を終えるだけで満たされたものでした。本当は犬が欲しかったので「ドッグ」と名づけたこぶたが、少年ジェイクの日々をどれだけ彩り豊かに変えたことか。エンタテイメントにあふれる現代にあって、ささやかな喜びとともに生きた人々の尊さが身にしみました。たとえ時代と場所が変わっていても、機軸をずらさない生活を送りたい――。時代物の絵本はいつも、そんなことを再確認させてくれます。
 イラストは、厚塗りの濃いパステルで描く影と光が印象的です。ときに抽象画、あるいは宇宙空間のようにも見え、未知の地で暮らす厳しさを表現しているかのようでした。この影の暗さこそ、どちらに転ぶかわからなかった因果な運命の代弁なのかもしれません。誰もが必死に生きていたのだと、あらためて思い知らされました。(asukab)
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  • 歴史的事実よりも、人生の機微が節々に織り込まれた絵本

Lucky Jake

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