Pictures from Our Vacation うちの夏休みに似ている

 『Pictures from Our Vacation』に描かれる夏休みの光景は、うちのと似ているので親近感を抱く。つまり「家族を訪ね、自然を満喫する」系のバケーション。といっても大陸横断が必要なほど遠方に家族はなく、テキサス州を除けば皆ワシントン州内に住んでいるので移動の負担は少ない。当地は海と山、湖――自然ならなんでもござれという恵まれた立地条件にあるため、夏はここぞとばかりにいつもの倍以上、緑風あるいは潮風に吹かれながらレイジー気分に浸らせてもらうのだった。
 絵本の冒頭には、農場に祖父母を訪ねようと出発する家族の光景が見える。各自の思いが噴き出しの中に示され、これには思わず共感して、そうそう!と相づちを打ったりして。「思い出になるから」と母親が2人の子どもたちに簡易カメラを渡して、休暇中、写真を撮るように促した。子どもがフォトグラファーになる写真だからアングルがおかしかったり、変なものが写っていたりするのだけれど、それも忘れがたい夏の形だ。車の旅は退屈で、雨、道路変更……と、休暇って思い描いているほど素敵じゃなかったりするのが現実かもしれない。でも、思い出はどこかどこかに必ず残るわけで、それがその年の色になり、匂いになって記憶の片隅にひっそりとたたずむ。
 子どもの視点――大人も子どもになっている――が巧く描かれていて好感の持てた絵本。大人も子どもになれる季節が、ますます特別に思えてきた。
 人それぞれに、それぞれの夏。わたしの場合、緑風より潮風がビタミン剤かな。(asukab)
amazon:Lynne Rae Perkins

  • 幸せな子ども時代に乾杯

Pictures from Our Vacation

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