Babies in the Bayou 水辺の赤ちゃんたち

 Bayou=バイユーとは、流れの緩やかな水域のこと。米国南部の河、湖、沼の入り江に見られます。水の流れがほとんどない状態なので水面はよどみ、灼熱の太陽の下、まるで時間も止まっているかのようなゆっくりとした一日が過ぎていくのです。(ここはブルース・ギターの音色がBGMにぴったりの、「トゥウィ〜ン、ウィ〜ン、ウィ〜ン」のあの感じ……です。)絵本『Babies in the Bayou』は、そんなバイユーに暮らす動物の赤ちゃんたちの様子を、レトロな感じのする独特な水彩で丁寧に描き出します。
 たとえとがった歯や鋭いつめの持ち主でも、赤ちゃんたちはみんなお母さんに守られて、与えられた自然環境の中で成長していきます。当たり前の姿が小さな存在を通して語られると、読み手は言葉にならない自然への畏敬と憧憬で心が震え、知らない間にこの絵本の魅力に引き込まれているのでした。
 かわいらしく詩的な文章に加え、独自の世界を繰り広げている理由はなんといってもその水彩にあります。表紙の印象から一見、40年代から50年代ごろに出版された絵本でないかとさえ思ったほどでした。時間を経て焼けた中間色の風合いを、この画家はどう作り出しているのでしょう。多様なメディアが存在せず、本を読んでもらうことが最高の楽しみだったであろうあの時代に根ざしているような風貌が、描かれるワニやアライグマ、カメなど動物親子の姿をさらに愛しく見せています。
 動物たちの登場のさせ方も洒落ています。構図の向こう側や遠いところに前に出てきた親子の姿があったりして、自然界のつながりが一望でき興味が膨らむのでした。
 作者ジム・アーノスキーの作品は「最高級の幼年向け自然絵本」と評されています。バイユーのほとりで過ごす、この絵本の時間を体験すれば、それは心から納得のいく評価であることがわかります。(asukab)
amazon:Jim Arnosky

  • 他にも多く野生動物の絵本を出しています

Babies in the Bayou

Babies in the Bayou