The Scallywags おおかみ一家のものがたり

 おとぎ話の悪役おおかみは、不朽のキャラクターとして存在します。『The Scallywags』は、そんなおおかみの個性をもとにマナーについておもしろおかしく描く絵本です。ときに野蛮な海賊を示す言葉でもある"scallywags"(=やくざ者)というタイトルからして、すでにおおかみたちの粗野な傍若無人ぶりが匂います。
 時間は守らないし、無礼な作法を繰り返すし……で、動物たちから仲間はずれにされてしまった14匹のおおかみ一家は、その理由を振り返りました。まわりの動物たちを観察してみると、欠点が見えてきます。彼らの真似をして、お風呂に入って、歯を磨いて、洗濯したお洋服を着て、「ありがとう」と「すみません」を忘れずに言って、自分たちだってまんざらじゃないことを証明しようと努めました。頑張ったかいがあり、ある晩出かけたレストランでは町のみんながその変貌ぶりに驚き、生まれ変わったおおかみたちを歓迎……と、思ったら。今度はいちいちマナーについて注文をつけてくるなど、一家は今までと打って変わって、逆に作法にうるさい存在になっていました。しかし……。
 本作の魅力は、なんといってもコミック風に描かれたおおかみたちの表情と個性にあります。うちではよく、迷惑なマナーを「海賊」、気持ちのよいマナーを「妖精」にたとえて話をするので、娘は自分のイメージ通りだったのか、つぼにはまっていたようでした。動物コミュニティーを背景にした楽しい絵本です。活字の大きさを変えたり、配置に動きを出したりの工夫で、会話に妙味が生まれています。(asukab)
amazon:David Melling

  • 英国の絵本

The Scallywags

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