Chester チェスターの一人旅

 ちょっとシュールでほんのり温かい絵本に出会いました。『Chester』は、寂しげな犬の姿を通して、現代社会の一面を投影させる哀愁帯びた絵本です。同時にアート心もくすぐり、画集として飾っておきたいような風貌も持ち合わせます。
 家族のみんなは学校や会社で忙しく、飼い犬チェスターの存在は日に日に薄くなっていきます。お散歩はここのところ、忘れられがち。「ぼくのことをだいじにしてくれるおうちがいいな」――。チェスターは犬小屋を引きずりながら、新しい家探しの旅に出ます。森の中、大きな街、高級住宅地、お金持ちのおうち……、ほうぼう彷徨い、最後は冷たい雨の中に取り残されて……。
 欧風のシュールな空間と日本的抒情を合わせ持つ水彩+色鉛筆のイラストが、慎ましくてきれいです。洒落たアートギャラリーのような透明な雰囲気を漂わせ、しっとりと語りかけてきます。この淡さは日本画を学んだという作者*1の色なのでしょう。犬も人物も小鳥たちも、ひっそりと絵の中に佇んでいるという感じです。アートな息づかいに包まれました。(asukab)
amazon:Ayano Imai

  • 一見無表情でも、ぽろり涙しているチェスターが愛しい

Chester

Chester

 今後、犬関連の絵本レビューを書くときは、id:hatenacinnamon会長にお知らせしようかなと思いました!