風車小屋ねこカッチェ

 『風車小屋ねこカッチェ』は、絶対11月に読みたいと思っている絵本。ところがいつも見慣れていた表紙が、ここにきて見つからない。1年間待ったのに、時期を逃すとは不覚。あせりながら本棚を整理していると、下の方に平積みで埋まっていることがわかった、やれやれ。お話は、南オランダが舞台。1421年11月5日聖エリザベスの日に遡る。
 カッチェは粉屋のニコといっしょに暮らす猫。粉を引く風車小屋にネズミが入ってこないように捕まえ、ニコとの日々をのんびり過ごしていた。お嫁さんのレナがやってきて、赤ちゃんのアッネケが生まれ、家の中の居場所は変わるけれど、カッチェは家族を慕い暮らしていた。こうして迎えた11月5日のある日。暴風雨が村を遅い、運河の堤防が決壊する。大水に流されていくゆりかごにはアッケネとカッチェの姿。ニコとレナは必死にボートをこぎ後を追うが、追いつかない。大波にもまれるゆりかごは、カッチェがふちを行ったり来たり移動してバランスを取り転覆を免れた……。
 この堤防決壊の教訓から、村人たちは二度と洪水の被害に遭うことがないよう、頑丈な堤防を築いた。その名も「キンダーダイク」(オランダ語で「子どもの堤防」の意)。勇敢な猫に救命された赤ん坊にちなんで命名した堤防には、今でも19の風車小屋が並んでいる。
 祖父も郵船時代に同地方を訪れた。このときの写真は、古いアルバムに収められている。風車小屋を背後に現地の子どもたちと土手に座り嬉しそうな笑顔を見せているので、堤防を築くきっかけとなった猫カッチェの存在がさらに特別に思えた。
 ベイリーの描くカッチェとオランダ地方の暮らしに、ほっとさせられる絵本。(asukab)
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  • ベイリーのイラストが美しい……

風車小屋ねこカッチェ

風車小屋ねこカッチェ