The Story of Charles Atlas 健全な心は健全な体に宿るを実践したチャールズ・アトラスの話

 「フィットネス」って、自分とは縁のない眩しい表現で、日本にいるときは自分の範疇でないと100%確信しきっていた。要するに外見を整えること、でしょ。人間は中身が肝心という価値観が染み付いていたから、スポーツ好きだったにもかかわらず、ジムとかエアロビクスとか、カラフルな装いで汗を流すイメージが苦手で、そういう場所やそういう文化にまったく興味が抱けなかった。軽薄なイメージがつきまとっていたのである。
 しかし、行く川の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。子ども2人を出産した体は、昔のままであるはずがない。加えて20代で患った腰痛が悪化し、わたしの「フィットネス」に対する考え方は、がらり180度方向転換した。ジム入会をプレゼントしてくれた主人に、何てお礼を言えばいいだろう。今や、ジム通いなしでは考えられない日々である。カーディオ・筋トレ、ヨガ・ピラテスを始めて以来、2人目出産以降悩まされてきた冬の風邪ひき+鼻腔炎・頭痛から一気に開放され、今ではここ数年寝込んだ記憶がないほどの快調ぶりなのだ。まず、自分の体の状態が手に取るようによくわかるし、運動した日としなかった日では、あきらかに心と体のありようが違う。スポーツがこれほど心身に影響を与えるとは、加齢ならではの実感なのだろうが、ともかく思いも寄らなかった。
 なので、1929年「ダイナミック・テンション」*1レーニング法を編み出し、心身の健康を唱え、フィットネス・プログラムを創設したチャールズ・アトラスの絵本『Strong Man: The Story of Charles Atlas』を読み、これは正論だよと思わずにはいられなかった。多少、流行の波に乗る面もあるのだが、いつの時代にも「健全な体に健全な心が宿る」事実に変わりは無い。体が小さく少年期に苛められた経験を持つ彼だからこそ、心と体のバランスを謳った言葉に説得力があった。少年たちには、こんな風に呼びかけている。

アトラス・コースは体のトレーニングだけじゃないんだよ。自分の生活に責任を持とうっていうことなんだ。
「体にいい食事をとる」「じぶんの部屋をきれいにしておく」「朝寝坊なんてしないで、早起きする」……

 ああ、ちょっと耳の痛い部分があるなー。伝記絵本であると同時に、子どもたちに心身の健康をうったえる良書だと思った。(asukab)
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  • 巻末に簡単な体操が紹介されていて楽しい

Strong Man: The Story of Charles Atlas

Strong Man: The Story of Charles Atlas