Hiromi's Hands ひろみさんの握るお寿司が食べたい!

 お寿司はとても高級品で、うちではそう簡単に食せない。でも今年の夏はちょっと奮発して、何かいいことがあれば「お寿司、食べに行こうか!」を続けてみた。子どもたちは、もちろん大喜び。そんなときに出会った絵本が『Hiromi's Hands』。ニューヨークの寿司職人すずきひろみさんの生き様を紹介する絵本である。読み終えて清々しさに包まれた理由は、厳しい世界で初志貫徹し、立派に一人立ちした彼女のまっすぐな生き方にあったと思う。
 8歳のとき、寿司職人の父親に連れられフルトン魚市場を訪れた際の描写が感動的だった。忙しい仕事場に初めて足を踏み入れたときの驚きは、どんなものだっただろう。魚の種類を尋ねても最初は相手にしてくれなかった父親が、次第に彼女の純粋さ、真剣さに打たれ、教え始めるシーンは、親だったらほろりの場面である。堅いのが新鮮で、柔らかいのはそうじゃない。目が透き通っているのがよく、ひれは欠けていちゃだめだ……肌で感じながら耳にした一言一言は彼女の心にしっかりと収められ、その後に進む道を導き出した。
 一人称の語りが、子どもの視線と心の清らかさを素直に描く。日本文化の礼節も慎ましく紹介され、日本っていいなあ……を思わず実感した。(asukab)
amazon:Lynne Barasch

  • 巻末にお寿司の紹介があるので、日本文化紹介にも一役買う絵本

Hiromi's Hands

Hiromi's Hands