Little Red Riding Hood クリスマスにぴったりの赤頭巾ちゃん

 中表紙には、色づいた晩秋の森に雪がちらほら舞い始める風景。村はずれの小屋で暮らすお母さんと赤頭巾ちゃんの姿が収穫の秋を終え冬支度に入る時節にこれほどぴたりとくるとは、目にしてみるまで実感できなかった。体調の思わしくないおばあちゃんのために持っていくお見舞いは、体の温まるチキン・スープと焼きたてのレーズン・マフィンである。米国の家庭料理ならではの組み合わせに、子どもたちはじーんと体が温まっちゃうんだろうなあ。『Little Red Riding Hood』の赤頭巾ちゃんは、巻き毛のかわいらしい黒人の女の子。これから雪の積もった森の小径を通り抜け、おばあちゃんの家を訪ねるのだ。
 北米の冬をそのまま再現した森の風景が、凛とした透明感を携えまた美しい。小鹿が頭をもたげ、野うさぎやりすが跳ねまわる。雪をかぶったもみの木が、オオカミが待つおばあちゃんの家を囲み、今からすぐにでもクリスマスの準備が始まりそうという様相だ。裏中表紙にはカーディナルが飛び交い、ヒイラギの赤い実がうれしそうに顔をのぞかせる。後半に向けて徐々に「赤」を灯していく流れは、クリスマスのお祝いの気持ちを高める演出だろうか。
 赤頭巾ちゃんとクリスマス。雪の白と頭巾の赤、おばあちゃんを助けてお祝いする光景――色の象徴と人道的行為が、ここでは見事にクリスマスのテーマと重なった。クリスマスを強調せず、クリスマスの気持ちに浸る。作者の巧みなストーリーテリングに舌を巻いた。(asukab)
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  • 作者のおとぎ話絵本の中で一番好き

Little Red Riding Hood

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