まってる。

 封筒の体裁に、ペンで書かれた『まってる。』のタイトル。人生の節々に見られる「まってる」場面を、赤い毛糸のつながりで表したフランスの絵本です。
 この時季に記したかった理由は、象徴として示された毛糸の色が、クリスマスの「赤」に通じていると思えたから。実際、絵本にもクリスマスを待つ場面が描かれています。救い主の誕生を待つアドベントこそ、「人生とは待つこと」の象徴でしょう。よって、赤い毛糸が示す時間の流れを、遠く眺めてみるに相応しいときだと思えたのです。
 "お兄ちゃん"って よばれる日を まってる……おやすみのキスを まってる……ママのケーキがやけるのを まってる……雨のやむのを まってる……クリスマスを まってる……運命がつながる日を まってる……
 作者の人生を振り返り、「まってる」描写が走馬灯のように現れ、紡がれていきます。戦争の終結を待ち、結婚を待ち、子どもの誕生を待つ。人生なので、悲しい「まってる」もあり、悲しみを乗り越える「まってる」もあります。
 最終ページに示された赤い毛糸の束が、何かを語りかけているようでした。あなた自身の「まってる」を、この毛糸で連ねてみてください――そんなメッセージが込められているのかもしれません。
 時間の流れを振り返り、過去の「まってる」を確かめ、未来の「まってる」に思いをはせてみる。クリスマスのお祝いを迎える前に、自分の人生を赤い毛糸で紡いでみるのもいいかもしれません。(asukab)
amazon:Davide Cali
amazon:Serge Bloch

  • 黒のペン画と赤い毛糸だけで描かれる空間は、「時間」そのもの。日仏併記

まってる。

まってる。

  • 作者: デヴィッドカリ,セルジュブロック,Davide Cali,Serge Bloch,小山 薫堂
  • 出版社/メーカー: 千倉書房
  • 発売日: 2006/11/17
  • メディア: 大型本
  • 購入: 7人 クリック: 59回
  • この商品を含むブログ (33件) を見る