まいごになったおにんぎょう

 ここのところ冷え込みが厳しくて、そんな理由もあったからか、道を歩きながらふと思い出したがお話が『まいごになったおにんぎょう (岩波の子どもの本)』だった。
 主人公は、手のひらサイズの小さなお人形。不幸にも持ち主の女の子から粗末に扱われていて、ある日、スーパーの冷凍庫の中に落っこちてしまう。冷え冷えとした風景には、グリーンピースブロッコリーなどの冷凍野菜や苺アイスクリームのパッケージが見えて、目にするこちらもブルブル震え出してしまうほどの冷気が漂っている。南極あるいは北極さながらの不思議な暮らしぶりが子どもを引きつける間、大人はますます寒気に包まれてお人形を気の毒に思うのだった。
 愛されたり、相手にされなかったり。哀しいかな、お人形やおもちゃには、さまざまな運命が付きまとう。ならば、このお人形の運命は、いったいどんなもの? 
 冷凍庫の中で寒さにも負けず、たくましく暮らし始めたお人形に、二度目の出会いが訪れた。スーパーにやってきた別の女の子が、冷凍庫の中のお人形に気づいてくれたのだ。この女の子は、お人形に帽子や洋服を縫ってあげ、プレゼントまでしてくれた。手作りの防寒着は、それはそれは暖かかったはず。この後の描写は、密かに子ども心をくすぐり、見ていてちょっと嬉しくなってくる。
 せっかくクリスマスに読むお話だから、最後はやはりハッピーエンドでなくちゃと思う。よかった、よかった。クリスマスが背景のお話ではないけれど、女の子とお人形の出会いは、心温まる冬の贈り物になる。(asukab)
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  • 邦訳の書影がないので、原書ペーパーバックで

The Little Girl and the Tiny Doll (Young Puffin Books)

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