Footwork: The Story of Fred and Adele Astaire フレッド・アステアのプロ魂

 「好きを貫く」話題で盛り上がっているはてな界隈。天才ダンサー、フレッド・アステアのプロ根性を描いた絵本『Footwork: The Story of Fred and Adele Astaire』を読み、「好き」とはつまりこういうことなのかと納得させられた。 
 ネブラスカ州オマハから母親に連れられ、姉のアデールと一緒にニューヨークの舞踏学校へ入学したのが5歳のとき。子役として当時の大衆劇場「ヴォードヴィル」を巡り、全米で大人気を博した。どの舞台でも最高の技を披露しようと、舞台床の状態を確認したり、音楽監督と話し合ったり、少しでもリズムの乱れた箇所があれば完璧を目指して何度も練習を重ねる。「好き」に包まれていると「苦」は見えず、「苦」に直面しても次の「好き」に向けてすでに足を踏み出している。絵本には、そんなアステア青年の姿が幼少期から描かれる。
 最初から「高く険しい道」を歩んだ人なのだが、舞台にかけるその集中力たるや、凡人とはかけ離れている。才能だけではなく、環境とか運命とか、空間の中で全てが一点につながった人生だったんだろうなと思う。いや、自分でつなげたと言うべきか。
 才能があっても全く興味を示さなかったり。才能はないが本人が心から愛していたり。芸術は世に認められることを前提にすると、まことうまくいかない。このすっきりしない部分が重くて、家庭の小さな幸せに浸っていればいいや……と逃げ腰になってしまうんだなあ。でもイエの幸福感がエネルギーの源であることは確かだから、やはり家族という日々の和みに自分は支えられている。
 シャープな線画は、日本画のような雰囲気を持ち合わせる。よって、何かしら大正モダンの時代を見ている感覚があった。(asukab)
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  • イラストが洒落ているので、教科書的な伝記絵本になっていない。ちょっとしたアート絵本でもある

Footwork: The Story of Fred and Adele Astaire

Footwork: The Story of Fred and Adele Astaire