Pink ピンク色の大好きな女の子へ

 『Pink』というタイトルからルンルン、女の子の「夢見るピンク」を思い浮かべたけれど、絵本に描かれるピンクにまつわるお話は、現実を絡めたちょっとほろ苦い内容だった。それは表紙に見える主人公ヴィヴィの表情にも表れている。ピンク色の可愛い品々に囲まれているのに、100%のスマイルではなく哀しい笑い顔を見せている。
 ヴィヴィが「ピンクス」と呼ぶメリリー、ミランダ、ジャニーンの3人組は、頭の先からつま先までピンクづくめ。カバンも靴も、髪につけたリボンも。ヴィヴィはうらやましくて仕方がない。お母さん、お父さんにお願いしても、赤ちゃんの世話に忙しかったり、「ほっぺがピンク色でしょ」なんて言われたり、まともに取り合ってもらえずにいた。ある日、ギフトショップで見かけたピンク色のお人形に、ヴィヴィは一目ぼれをする。一所懸命お金をためて、買おうとしたけれど……最後に哀しい結末が待っていた。
 どんな展開になるのかな、と見守っていたら、よくありそうな、非常に現実的な終り方だった。このあたり、ハッピーエンドより逆に共感できそう。トラック運転手のお父さんのハーモニカにしんみり。
 「人間、全てを手に入れることはできないよ」というお父さんの言葉が、この絵本のメッセージ。いやはや、全くその通り。物だけでなく、人の心も能力も。最近、おねだりの多い娘は、このメッセージをどう受け取るだろう。
 それにしても、どうしてこの色は女の子をこうも魅了するのでしょう。自然界でも特別な色だからかしら。桜、フラミンゴ、子どものほっぺた、こぶた、コスモス、朝焼け・夕焼け――(asukab)
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Pink

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