Trainstop 今度は小人の国へ

 『Trainstop』は、バーバラ・リーマンの文字無し絵本第4弾です。
 ここにきて、少し趣向が変わりました。平面的というか、今までのような空間をうねって入っていく深さが感じられません。しかし、だからといってこの絵本が普通なのかといえばそうでもない。切り口が日常寄りに変わっただけのことで、心の隅にちょこんと喜びを湛える作風はどの作品*1,*2,*3にも通じる味わいと言えるでしょう。
 冒頭はワクワクと、子どもに身近な列車の旅から始まります。(都会の子どもにおなじみの……と注釈を付けるべきかな……。)窓越しに風景を眺めているうちに列車が止まり、着いたところは不思議や不思議、小人の国。遠近法で描かれるので、遠くに見えた人や動物がまさか小人とは思えませんでした。ここは子どもにしてみたら過去作品の不思議な空間よりも、親しみが感じられる設定かもしれません。一連の光景がファンタジーへの憧れにつながり、本作品の一番の魅力となっています。そうして楽しいひとときを過ごし家に戻っても、お楽しみはまた続くのでした。まるで、自分の日常にも起こりそうな気配を残して。
 リーマンは確かシカゴ出身で、ニューヨーク在住です。摩天楼の風がこちらに吹いてくるような描写から、都会に住む子どもたちへの思いが伝わってきました。
 前作レビューで、どの季節に読みたい絵本かを記していましたが、偶然にもこの絵本は、残っていた「春」にぴたりと当てはまります。小人の国での描写が、まさに春なのです。これでわたし的には四季すべてが出揃ったわけですが、作者は意図していたのでしょうか。(asukab)
amazon:Barbara Lehman

Trainstop

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