Jon Scieszka's Trucktown Smash! Crash! あえて言ってしまおう 男の子は"破壊"が大好き!

 何年か前、教員の方が「思春期の男の子を一言で表す言葉は"破壊"だ」と話していた。鳴り物入りの絵本『Smash!Crash! (Jon Scieszka's Trucktown)』を読み、そういえば……と「破壊」の二文字が脳裏を過ぎった。なるほど……、トラックのジャックとダンプのダンが繰り広げる「バシーン! ドカーン!」のいたずらはまさに破壊であり、男の子の本能を目の当たりにした。
 この絵本に正誤を示そうとする意図はまったく見られない。作者のシェスカは自らの男性と長年の教員生活から、この視点を見抜いていたのだろう。本嫌い男の子の現状を理解し、「男子への読書案内」として独自のサイト*1をスタートさせた後、作家や画家仲間の協力を募り小さな年代向けに生まれたのが本作品だった。
 イラストに携わった面々を見れば、いかに豪華な賛同者が揃ったか一目瞭然だ。みんなその昔は男の子だったから、絵本の本意を汲み取り楽しみながら制作したのである。技術進歩によるデジタル処理で、3画家による共同制作も可能になったという。
 このトラックタウン・シリーズはアーティストは変わるが50冊の男の子向け絵本を構想しているそうで、未だかつてなかった大きなプロジェクトに発展しようとしている。米国の現状を考えたら、こういう企画が生まれても不思議ではなかったということだろうか。ある意味、コンピュータ・グラフィックスの技術革新と米教育界の需要から満を持して生まれた絵本と言えるかもしれない。
 一読したときは、「ええー、これで、いいの?」と疑問を抱いたのだけど、二度三度と読んでいくうちに、楽しそうにミキサーの土をごねごねにしたり、タイヤやドラムでタワーを作ったりするジャックとダンの笑顔に気持ちがほころび始めた。彼らは「これは、やってはまずいかも知れないけど、やめられないんだよね」と無邪気な気持ちで図に乗ってしまうのだ。誰かに怒られそうなのだけど、そこはすたこらさっさと逃げ出してしまい、まあ、いいか! と言ったお気楽な具合。本来ならお仕置きのような結末につながるのだが、最後は最後でまた「バシーン! ドカーン!」である。ここは、子どもから共感の嵐……というところか。
 背高のっぽのクレーン車が、1ページ分を折り上げるスタイルで登場する仕掛け付き。見返しにたくさんの自動車が紹介されていて、シリーズでは彼らが大活躍をする。
 人気必至の絵本だと思う。今年初め、アメリカ議会図書館から児童文学大使に任命されたシェスカ、乗りに乗っている。(asukab)
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Smash!Crash! (Jon Scieszka's Trucktown)

Smash!Crash! (Jon Scieszka's Trucktown)