A Visitor for Bear おもいがけないおきゃくさま

 孤独を好むおおくまさんのところに、ちっちゃいねずみがこんにちは。ねずみは表の戸からやって来ただけでなく、戸棚のおわんの中だったり、引き出しの中だったり、冷蔵庫の中だったり、所を変えてひょっこり顔をのぞかせます。そのたびにおおくまさんは「やめてくれい!」。迷惑千万極まりないとちびねずみを追い払いますが……。
 『A Visitor for Bear (Bear and Mouse)』のおおくまさんの家には「おきゃく、おことわり」の看板。このキャラクター設定だけで何となくお話の結末が読めてしまいますけれど、ねずみが愛嬌たっぷりで惹かれました。加えてこの画家の絵*1が好きなので注目でした。確かカナダの画家だったと思いますが、さらりと描く水彩に独特の味わいがあります。でも、この作品ではもうちょっと色を塗ってもよかったかも。いつも見られる色の重ねが少なく、少々の物足りなさを感じてしまったかな……。
 くまの暮らしぶりを見て、孤独を愛する理由を考えずにはいられませんでした。多分、それはこう――「相手にはわかってもらえないだろう」というひとつの確固たる世界を抱いていることが原因かと思われます。自分にしてもこの感情を抱く節があり、少しばかりの共感を得ます。しかし、ねずみのような心の友がいてくれたら、もちろんこれに勝る存在はありません。
 くまとねずみ、大小の形が愛らしく映る絵本です。背景の木が紅葉しているので、これは秋向きの絵本でしょう。春夏だったら、作中お茶のシーンはピクニックにしたいところですね。(asukab)
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A Visitor for Bear (Bear and Mouse)

A Visitor for Bear (Bear and Mouse)