Night Running: How James Escaped with the Help of His Faithful Dog ランナウェイとフレンド

 昨夜は教会で夕食会準備のお手伝いをした。数か月に1回、児童クワイアーの父母が準備を担当することになっている。メニューはメキシカン。リーダーの支持に従い、わたしはタコスのひき肉を炒めた。直径1メートル近い巨大フライパンで料理するのは初めてのことだったので、胸がバクバクと高鳴ってしまった。
 食事のときに司祭の一人と同じテーブルになった。彼の奥さんはスペイン人で、父親は南アフリカに赴任していたという国際経験豊かな人である。話の中で教会文化が話題に上がった。同じ米国聖公会でも全米各地で文化が違うというのである。これは日本でもそうだったから納得がいった。興味深かったのは、「周りの文化を模倣しようとしてしまい、肝心なキリスト者としての生き方のモデルになっていない」という指摘だった。周りの文化とは、居住する地域文化のことで、たとえば中流ヤッピー、上流資産家……そんなところを意味すると思う。お金があると社会的な役割が増え、どうしても商業主義の傾向に陥ってしまう。キリスト教にも周辺文化に横たわる「イメージ」で接している、ということらしい。その接点をどう生きるか。どうしたら豊かで幸せなキリスト者として生き方のモデルになれるのか。難しいところだと思う。
 聖公会プロテスタントカトリックの中道を行く……と子どもの頃に教えられた。偏りのない、言い換えれば曖昧さが持ち味で、そのいい加減さを叱咤する人も多かった。でも、今多様文化でにぎわうシアトルに住んでみて、そのユニークな特徴が際立って見える。司祭曰く、「非常に変わっている街。こんなところは他にはなくて、自分は気に入っている」。わたしもそう感じていたから、気持ちが和んだ。
 娘の小学校でスペイン語を教えていらっしゃるミセスPに会った。とても社交的な方で、自分とは違う個性に引かれた。
 さて今日の絵本は『Night Running: How James Escaped with the Help of His Faithful Dog』。ハウンド犬といっしょに南部バージニア奴隷制度から逃亡を試みた少年ジェームス・スミスの実話である。走れなくなるまで走って逃げ、野生のオポッサムやリスを食し命をつないだ。オハイオ川を溺れ死ぬ寸前で渡り切り、最後はクエーカー教徒(フレンド)に助けられるのである。その後バプテスト教会牧師になったスミスは、亡くなるまで逃亡体験を語り続けた。
 バプテスト教会の文化は、悲惨な奴隷体験の裏返しなのだろう。幸せな今に生きる自分には想像を絶する過去なのだが、こうして絵本を介してこの国のたどった軌跡を学べることに感謝したい。(asukab)
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Night Running: How James Escaped with the Help of His Faithful Dog

Night Running: How James Escaped with the Help of His Faithful Dog