Silent Music 灼熱の地に流れる静謐な時間

 『Silent Music: A Story of Baghdad』のタイトルと表紙イラストから浮かんだキーワードは、音楽、砂漠、サッカーでした。でも、これらはすべて絵本に背景に見えるもの。作品は、イスラム文化に古くから伝わるカリグラフィーに心を重ねる少年アリを描きます。
 米国によるイラク攻撃が始まった夜、バグダッドは世界でもっとも危険な闇に包まれました。アリはこのとき、カリグラフィーの大家ヤクートに思いを寄せました。1258年、バグダッドがモンゴルに襲撃されたとき、ヤクートは高い塔にこもり、一心に書に打ち込んだと言います。激しい爆撃音がとどろいた2003年、アリはヤクートの美しい筆跡を思い浮かべ筆を走らせながら、恐怖を遮断し平安で気高い世界を求めました。コーランの写本から始まったカリグラフィーは、イスラム文化では重要な意味を持ちます。音楽を奏でるかのような流れる文字で、アリはヤクートが祈ったように平和を願ったのです。
 バグダッドに住むサッカーが好きの少年が一人称で語る、深みのある絵本です。鉛筆、木炭を使用し、コンピュータ・グラフィックスでコラージュを試みたイラストも同様に気品にあふれています。この絵本のおかげで、イスラム・カリグラフィーの心に触れたような気がしました。
 ……本日は、娘の小学校で国際・民族フェスティバル。娘は着物を着て大喜びでした。いなり寿司を振る舞い、折り紙を指導し、大忙し。余興のダンスでは、インド・パンジャブ地方の踊りが最高にすてきでした。美男美女がキラキラの衣装をまとい、伝統的でかつモダンな踊りを披露してくれ、ほれぼれ。夢中になってしまいました。(asukab)
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Silent Music: A Story of Baghdad

Silent Music: A Story of Baghdad