The Birthday Tree 親心がしみる

 『The Birthday Tree』は、作者・画家コンビに惹かれて読んだ絵本。ハッピーエンドなのだが、親心に身が引き裂かれる思いをする絵本だった。
 息子3人を海難事故で亡くした船乗りは、悲劇を忘れるために妻と共に海辺を離れた。潮風の吹かない地で男の子ジャックをもうけた夫婦は、誕生記念にとりんごの木を植える。木はまるで、ジャックの気持ちをそのまま表すかのように振舞った。ジャックが病気のときは木もしおれ、元気なときは生き生きと葉を輝かせた。運命とは不思議なもので、ある日ジャックは潮風に引かれ、海に旅立ってしまう。嘆いた夫婦はりんごの木の様子を見て、ジャックの気持ちを知る日々を送った。
 なんとなく物悲しい。海の郷愁がそうさせるのか、くすんだ中間色のなせる業なのか。イラストの色合いは『ポテト・スープが大好きな猫』風。流れる空気、光、風の色が同じ。言わずもがな、ここにも猫が登場する。海のお話なので、当然か。(asukab)
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The Birthday Tree

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