母からの伝言

 『たまゆらの道―正倉院からペルシャへ』から。織物を始めたときに志村さんの母親が伝えた言葉。

「私は正装とか豪華な衣装は身に添わない。かといって呉服屋やデパートで気に入った着物がないのや。贅沢ではない、ただ自分の本当に気に入った着物が着たい。あなたに織ってほしいのはそれや。自分が着たいな、愛している人に、夫や子供や友達に着せたいな、と思うものを織ってほしい」

 糸から染めて身にまとう着物は、遠い夜空に光る憧れの世界。
 わたしも自分の好きなものだけを求めて書き、描き、残せたらと空を見上げた。