The Mouse of Amherst エミリ・ディキンスン家のネズミ

 『The Mouse of Amherst』は、夏休み前からずっと気になっていた児童書。小学校の図書館で表紙を目にしたときから「読まなくちゃ!」の直感が走り、休みに入ると同時に借りてきた。もう、この小さな家ネズミの姿からして啓示ではないかと思ってしまったほど。
 娘も言っていたけれど、設定がとにかく可愛らしい。

I was the slightest in the House---
I took the smallest Room---
At night, my little Lamp, and Book---
And one Geranium---


So stationed I could catch the Mint
That never ceased to fall---
And just my Basket---
Let me think---I'm sure
That this was all---


I never spoke---unless addressed---
And then, 'twas brief and low---
I could not bear to live---aloud---
The Racket shamed me so---


And if it had not been so far---
And any one I knew
Were going---I had often thought
How noteless---I could die---

 作者はエミリー・ディキンソン(1830-1886)の詩(上記引用)から想像を巡らせ、詩人の部屋に住み込む家ネズミ、エマリーヌとディキンソンの友情物語を思いついた。詩作をとおして両者が心を通わせる場面は、ほっこりと心があたたまる。なんて可愛らしいフレンドシップ。
 死後、家族の出版した詩集で名声を得たディキンソンには、謎めいた部分が多い。未婚のまま、ほとんど家から一歩も出ずに生涯を通したというので、彼女を描いた絵本や読み物には自ずとファンタジーがかった作風が多かったりする。詩は破調のため生存中は認められず、本作にも編集者に作品を拒否され、苦悶のうちに過ごす日が描かれる。
 残された詩から寓話と史実を一体化させたわずか60ページの短編を、娘は何度も「かわいい」を連発させて読み終えた。そう、やはり、ネズミの視点が何ともいえない魅力をかもしている。エマリーヌの知的な語りが作品全体に気品を漂わせ、両者に通じるひたむきで繊細な個性を描写した。
 調べてみたら邦訳『エミリ・ディキンスン家のネズミ』が出ているそう。詩の部分など、日本語で読むとまた違った味わい方になるだろう。(asukab)
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The Mouse of Amherst

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