Ghosts in the House! 今年いちばんのハロウィン絵本

 「今年いちばん」というのは、もっともチャーミングで、しかもこの早い時季にお目にかかれたという意味で。ちょっと興奮気味です。娘が「かわいい、かわいい」と連発していたので、どーれと手にして、これは本当に! 近年まれに見るハロウィン絵本の傑作ではないでしょうか。
 『Ghosts in the House!』は、版画で物語る、おばけ屋敷のお話です。でも、ちっとも怖くないところがミソ。作者は英国に渡り版画の道を究めた日本人アーティストで、なんというか、日本のポップカルチャー独特のほのぼのした温もりというか、和みの空気というか、日本産キャラクターに見られるような「かわいらしさ」が絵本全体を包んでいます。でも、そればかりではありません。版画ですから同時に古風な人間の業も介在し、西洋の行事をほんのりクロスカルチャーな、いまだ見たことのないハロウィン絵本に仕立て上げた稀有な作品だと感じました。キリスト教的ハロウィンの染みついていない切り口が新鮮なのでしょう。
 町外れの一軒家に、ひとりの女の子が住み始めます。ところが、たいへん。この家はおばけ屋敷でした。でも、ぜんぜん平気です。なぜなら、女の子は魔女だったから。さっそくほうきにまたがり、ふわふわ浮いているおばけをつかまえます。そうして何をしたと思います? 女の子は白いおばけたちを洗濯機に入れ、きれいに洗ってあげました。そして、その後は……、絵本を開いてからのお楽しみ。
 女の子と猫の笑顔も可愛らしいのですが、何と言っても魅力は、のほほん、ぷかりと現れるおばけたちの表情でしょう。ほっとする優しい笑顔を見せながら宙に漂っているので、「怖い」イメージよりも「可愛い」のほうが先走ります。薄い紙に切り取られた、半透明な容姿がいい味をかもしているのですね。黒インクのむらと透けた白い紙の質感が、ほどよく調和しています。構図もおばけ屋敷の魅力に一役買っていて、アートとしてお部屋に飾りたくなってきます。
 この秋一番の、オレンジと白と黒の魅力にあふれた一冊です。作者のデビュー作に、拍手喝さいです。英国版のタイトルは『The Haunted House』。(asukab)
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Ghosts in the House!

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