South 南をめざした 1ぴき 1わ

 聖フランシス日にふさわしい1冊は、『South』。ネコくん*1とことりちゃんの交流がハートにしみる、秋にぴったりの文字なし絵本です。
 秋も深まった頃、はだか木の下に、仲間とはぐれてしまったことりちゃんが1羽。誰もいないのでエーン、エーン。泣きはじめると、心やさしいネコくんが、ぼくが南に連れていってあげるよ、と手を差し伸べてくれました。
 ほんのり薄ベージュ色の紙には、ぬくもりがいっぱい。そこに毛筆で落ち葉やはだか木が描かれるのですから、水墨画のような風情もあります。侘しい場面など、秋にぴったりと言えるでしょう。加えて、めんどうを見てあげるネコくんと小さなことりちゃんコンビがいじらしく、ホロリ。木々の色づく季節だからこそ、じんとハートにしみるお話かもしれません。
 チーチーチー、ワンワン!――。聖フランシス日の聖堂には動物の鳴き声がにぎやかに響きわたり、いつにも増して笑顔が見られました。説教にもあったように、動物の存在だけで人々のコミュニケーションが豊かになることの証明だったかもしれません。ほんとうに、ペットはそこにいてくれるだけで心が和みます。絵本の中のネコくんとことりちゃんの姿も、そんな、ほっこり、心をあたためてくれる存在でした。(asukab)
amazon:Patrick McDonnell

South

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