Spells おまじない
実力派の画家に遊び心が加味されると、とてつもない作品ができ上がる。エミリー・グラヴェットの最新作『Spells』を手にした瞬間、絵本からこちらに魔法をかけられる気がした。
彼女の作品*1,*2,*3では、いつも魅力たっぷりの動物が主人公に抜擢されるのだが、今回脚光を浴びるのは1匹の小さなカエルさん。おとぎの国からやってきたに違いない、無垢で夢見る笑顔をふりまいている。
お話はいつものように中表紙から始まっていて、ここには過去の受賞作から彼女の作品イメージとして定着しつつある存在、「本」が一冊。タイトルは、本作と同じ"Spells"。さっそく作者名が"Emily Gribbitt"になっている、カワイイ! リビッ、リビッ!
王子さまになりたいカエルは、魔法の呪文をとなえて願いをかなえようとするのだが、そうは問屋がおろさない。試行錯誤を繰り返す過程は、ページを半分に切った変身しかけ絵本の妙味で表現されることになる。頭がカエルのままで、下半身がウサギになったり、ヘビになったり、トリになったり、イモリになったり、もちろん、その逆もありで、読者は思いのままに魔法の創作で遊ぶのである。破られたページをつぎはぎして作ったゆかいな呪文や、上下に切られたへんてこな動物を示す造語など、いつもながら細かな遊び心があちこちに散りばめられ、この一冊でも作者のアート力が遺憾なく発揮される。魔法と変身のテーマを巧みに組み合わせた、創造の勝利と言えるだろう。(王子さまとお姫さまクローズ・アップのページにもコラージュが使用されていたら、さらに魅力が持続できたかも、とは感じたけれど。人間だからそれでよかったのかもしれないが、この空間だけ別になっている。)
でも、次回も楽しみ――と思わずにはいられないよね、これは。(asukab)
amazon:Emily Gravett
- 作者: Emily Gravett
- 出版社/メーカー: Macmillan Children's Books
- 発売日: 2008/08/01
- メディア: ハードカバー
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