Spells おまじない

 実力派の画家に遊び心が加味されると、とてつもない作品ができ上がる。エミリー・グラヴェットの最新作『Spells』を手にした瞬間、絵本からこちらに魔法をかけられる気がした。
 彼女の作品*1,*2,*3では、いつも魅力たっぷりの動物が主人公に抜擢されるのだが、今回脚光を浴びるのは1匹の小さなカエルさん。おとぎの国からやってきたに違いない、無垢で夢見る笑顔をふりまいている。
 お話はいつものように中表紙から始まっていて、ここには過去の受賞作から彼女の作品イメージとして定着しつつある存在、「本」が一冊。タイトルは、本作と同じ"Spells"。さっそく作者名が"Emily Gribbitt"になっている、カワイイ! リビッ、リビッ!
 王子さまになりたいカエルは、魔法の呪文をとなえて願いをかなえようとするのだが、そうは問屋がおろさない。試行錯誤を繰り返す過程は、ページを半分に切った変身しかけ絵本の妙味で表現されることになる。頭がカエルのままで、下半身がウサギになったり、ヘビになったり、トリになったり、イモリになったり、もちろん、その逆もありで、読者は思いのままに魔法の創作で遊ぶのである。破られたページをつぎはぎして作ったゆかいな呪文や、上下に切られたへんてこな動物を示す造語など、いつもながら細かな遊び心があちこちに散りばめられ、この一冊でも作者のアート力が遺憾なく発揮される。魔法と変身のテーマを巧みに組み合わせた、創造の勝利と言えるだろう。(王子さまとお姫さまクローズ・アップのページにもコラージュが使用されていたら、さらに魅力が持続できたかも、とは感じたけれど。人間だからそれでよかったのかもしれないが、この空間だけ別になっている。)
 でも、次回も楽しみ――と思わずにはいられないよね、これは。(asukab)
amazon:Emily Gravett

Spells

Spells

 娘といっしょに晩祷に出席。息子が小さなときお世話になった音楽監督がシカゴ教区の役職を得て移動することになり、その喜ばしい旅立ちをお祝いする特別な礼拝だった。自作の詩篇・聖歌が2曲歌われ、お別れは淋しいけれど、みんな晴れやか。若くて才能に満ち溢れた彼の前途に、豊かな実りがあらんことを祈りたい。息子はサッカーの練習で出席できず、すごく残念がっていた。