Little Mouse's Big Book of Fears こわがりネズミさんの絵本

 絵本をアートメディアとしてとらえ、創作、表現するエミリー・グラヴェット。『Little Mouse's Big Book of Fears (Kate Greenaway Medal)』を手にしてあらためて強く感じた。
 主人公は、こわがりネズミさん。蜘蛛、虫、お化け、ナイフ、お風呂、水、大きな音、時計、闇、犬、猫……"phobia"=恐怖症で表される「恐怖」の対象は実に多岐にわたり、コラージュ使いのアートに加え、日常で耳にしたことのない学術用語の提供にも感心する絵本だった。めくり、切り抜き、地図、新聞と絵本の中には遊びの工夫がたくさんしかけられ、おまけに読者自身の恐怖体験や対象を書き込むようページごとに促している。インターアクティブ×インターアクティブで、娘は驚きながら「書いてもいいのー?」とほくそ笑んだ。
 語り部でない分、お話的には物足りなさも残る。時間を乗り越えていくのはやはり「ストーリー」だと思うので、時代性を反映するアート絵本がどこまで残るのか――興味深いといえば興味深い。
 絵本収集というよりアート収集に近い感覚で、これからもどんどん集めなくちゃね。どのような切り口で絵本に挑むのか、こちらとしても楽しみでしかたがない。(asukab)
amazon:Emily Gravett

Little Mouse's Big Book of Fears (Kate Greenaway Medal)

Little Mouse's Big Book of Fears (Kate Greenaway Medal)


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