たった いっぽんの まつのきに 

 小さな子どもたちに自然の豊かさを伝える絵本『たったいっぽんのまつのきに (NatURe MaPS)』(原書『Just One Quiet Pine Tree』)には、すてきな秘密がたくさんつまっていました。

のはらに ぽつんと
まつの きが いっぽん。
たった いっぽんの まつの きに
なにが みえるか ちかづいてごらん。

 てっぺんにはカラスとタカ、まつぼっくりのついた枝にはリスやことり。もっと近くで見ると、小さな虫たちがたくさん幹を這いまわっています。それだけではありません。根元にも、根の下にも、小さな生命が宿り、1本の木が生態系の大きな支えとなる姿を伝えているのでした。
 ありのままの躍動感をこんな風にやさしい言葉で語りかけてもらうと、なんどもなんどもページを見返したくなるものです。そうするうちにいつの間にか、土のぬくもりと緑の香りがわたる安堵感に包まれているのですね。
 松の木に広がる自然のすばらしさはもちろんのこと、素朴なアート表現*1も息を呑む美しさです。和紙のような質感の紙に身近な素材の千代紙や漢字の広告コラージュがのぞき――画家は日本人――、自分も挑戦してみようかな……と子どもたちは創作心をこちょこちょと刺激されることでしょう。
 それに加えて、この折りたたみ式ページの工夫! これは小学校のブックレポートでさっそく取り上げたい折り紙形式の表現方法です。グリーティング・カードにも応用が利くでしょう。小さなネイチャー絵本は自分にとり、自然界のメッセージを再確認するだけではありませんでした。
 もう1冊の『ほんのちいさないけだけど (NatURe MaPS)』(原書『Just One Peaceful Pond』)も、同様のかわいらしさです。機会を見つけて、夏の頃またご紹介します。(asukab)
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たったいっぽんのまつのきに (NatURe MaPS)

たったいっぽんのまつのきに (NatURe MaPS)