もうすぐ ゆきのクリスマス

 『もうすぐゆきのクリスマス―ターシャ・テューダークラシックコレクション』では、1830年代をもっとも愛しているというターシャ・チューダーが当時のクリスマスを伝えます。
 絵本から伝わるのは、ビクトリア朝時代の風。英国が産業革命を完成させ海外進出をしはじめた社会的背景は、もちろん米国ニューイングランド地方にも影響をおよぼしていたでしょう。時代の豊かさをバックボーンに、素朴で喜びに満ちた暮らしが描かれます。
 ただ、絵本はとても美しいのですけれど、自分にはどうしても「つながれない」感覚が残ります。この何かがつっかかる気持ちは、いったい何なのでしょう。列強が帝国主義を振りかざした時流から受ける圧迫感があるかもしれません。
 加えて今の自分と生活を基軸にした接点を持ちはじめる前世紀は、個人的に色眼鏡で眺めてしまっている可能性もあります。離れたところに存在するのではなく近隣に存在する絵本なので、体全体で受け入れられないざらつく刺激が残り、またそういうものだと構えてしまっているのです。美しい絵本を前にして、ちょっと情けなく悲しい姿勢です。(asukab)
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