Miss Susy リスのスージーさんが理想的な生き方を見せてくれます

 昨日、新しい児童書店で購入した絵本は『Miss Suzy』(邦訳『りすのスージー (ゆかいなゆかいなおはなし)』)の40周年記念版。娘といっしょに読み、スージーさんの生き方にそろってうなづいた。敬称の理由は、頭が下がるほど彼女がはたらきものだから。
 りすのスージーさんは、樫の木のてっぺんにある小さな家で幸せに暮らしていた。ところがある日、乱暴な赤いリス団にすみかを奪われてしまい、しかたなく無人の家で見つけた人形の家に住み始める。住みなれた家とは違い、ここにはふかふかのカーペット、きらきらのシャンデリア、ピアノ、食器棚があり、きれいにお掃除すると家は豪華なお屋敷に生まれ変わった。箱にしまわれていたおもちゃの兵隊さんたちを取り出し、まるでお母さんのようにお世話をしてあげるスージーさん。こうしてきれいなお屋敷で何ひとつ不自由のない日々を送っていたにもかかわらず、ある日、ふと質素な樫の木の家が恋しくなり、おもちゃの兵隊さんに横暴な赤いリス団のことを打ち明けた。憤慨した隊長は5人の兵を引き連れて、かしの木の家に向かって行進しはじめる。
 小さな家での、小さな日々。自然の恵みを享受しながら小さく生きる暮らしこそ幸せの本質……と再確認せずにはいられないお話だ。娘もわたしもスージーさんの価値観に、すみからすみまで大共感。
 幸せとは、おうおうにして時間であり、目に見えないものである。個人主義と商業主義から成る米国で物に囲まれていると、お金で還元される暮らしやすさが普通の感覚となり、この時点からきっと心の腐敗が始まっていく。本人も無意識のうちに。ノナおばあちゃん*1の含蓄にもあったではないか、「忍耐」のない人生に幸せは伴わないと。本質の見えなくなる満たされた暮らしは偽善者と同じで、まっぴらごめんなのだ。逆に本質さえ見えていれば、幸せはいつもそこに居てくれる。
 よいタイミングでスージーさんのお話が読めてよかったな。小動物とお人形の物語にはいつもホッとさせられて、心がほっこりあたたまる。黄葉とどんぐりの秋に。
 表紙の橙が秋の陽だまり色で、スージーさんの個性にぴったり。(asukab)
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Miss Suzy

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