Wonder Bear 今年のクリスマス・プレゼント その1

 どこへ足を運ぶにもクリスマス・プレゼントへの想いが駆けめぐり、あれにしようか、これにしようか――今週が一番迷いに迷うころではないでしょうか。その点「贈り物は本」と決めておくと、それだけで目的地がはっきりするので非常に助かります。娘には今年、数冊の読み物と絵本を準備しました。そのうちの一冊がこちら『Wonder Bear』。白地にターコイズ・ブルー、みかん色、草色三色のシルクスクリーンが印象に残る、大判の文字なし絵本です。
 作者はこの卒業制作で絵本デビューとのこと。なるほど言われてみれば、ほかにあまり見たことのない独特の色使いと輪郭線に新人画家としてのみずみずしい感性が表れています。ぽてっとしたキャラクターは現代風にも懐古風にも見え、時代性、文化性不詳が最大の魅力として映ります。
 冒頭、男の子と女の子の植えた種から芽がにょきにょきと伸びていくところは、まるで「ジャックの豆の木」のようです。そこから花が開き、生まれ出てきたのがワンダー・ベア。ふたりを夢想ファンタジーに誘う、魔法使いの白くまさんでした。帽子からおサルを出して見せたり、変わった形のシャボン玉を作ったり、花や葉っぱを食べて海洋動物を登場させてみたり。遠近感を持たせた大判の構図が生き、読者はまるで自分もワンダーランドに迷い込んだ気分でページをめくることになります。
 同じ文字なしデビュー絵本『The Red Book (Caldecott Honor Book)*1を想起しましたが、躍動感、迫力の域が異なります。静かな赤い本に対してこちらは遊園地を訪れたような「動」の世界。見開きの広い空間に吸い込まれるようにして、子どもはファンタジーを満喫することでしょう。
 描かれるキャラクターが息子にも向くかな……と一瞬思いましたが、無難に娘用に選びました。(asukab)
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Wonder Bear

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