ほしのひかった そのばんに

 『ほしのひかったそのばんに』は、最初のクリスマスをわかりやすく伝える絵本です。新訳聖書「マタイによる福音書」「ルカによる福音書」のイエス降誕に至る場面を、やさしく語っています。 
 深紅の表紙には、「さあ、こっちよ」とベツレヘムを指差しているかのような金色の天使。横長に広がる空間が神々しくもあり素朴でもあり、「星の光ったその晩に何が起きたのだろう……」と不思議な好奇心に抱かれます。イラストは司修さんの版画ということで、やはり。対峙するだけでアートの力に浸れることもあるでしょう。
 マリア、ヨセフ、羊飼い、天使、東方の博士たち――聖劇でおなじみの面々に加え、絵本ではロバや羊、ことりも救い主の誕生を心から祝福します。小さきものの存在が、クリスマスには大切な意味を持つのです。
 初版は、1966年。クリスマスを正しく伝えられた作者のわだよしおみさんとは、どのような方なのでしょう。こぐま社のウェブページを訪ねてみると……和田義臣(わだよしおみ)1913年、福井市に生まれる。編集記者より劇作に転じ、さらに、こぐま社の設立に尽力する。その後は、絵本制作に専念する。「こぐまちゃんえほん」シリーズの集団制作に、もりひさし、わかやまけんと共に参加……とありました。子どものための活動に生涯を尽くしてこられた方なのですね。文章の清らかな響きも、子どもを見つめる精神の反映なのだと即座に首肯でした。
 こぐま社と言えば、息子が『しろくまちゃんのほっとけーき (こぐまちゃんえほん)』と出会って以来、10歳になるまで毎年お誕生日カードを贈ってくださった出版社です。丁寧な手書きによる葉書きを受け取るたび、まごころの大切さを教えてもらいました。心のこもった可愛らしいカードでずっと息子の成長を見守ってくださり、心から感謝です。このクリスマスの絵本にも、まっすぐに大切なものを伝えようとする慎ましさと温もりがたくさん込められています。
 子どもたちの心に宝石の輝きを贈る美しい絵本。書影がなくてとても残念です。
 明日は降誕前夜。世界中の子どもたちに、星の光りが届きますように。(asukab)