雪の日のパーティー

 「のばらの村のものがたり」(全8巻)――ずっと欲しかった絵本が復刊され、さっそく季節にお似合いのお話から読み始めました。シリーズその4は『のばらの村のものがたり(4)雪の日のパーティー (講談社の翻訳絵本)』。大雪に見舞われたら、ご先祖のしきたりを守り、雪の舞踏会を開くのばら村の様子が描かれます。

雪はふかくつもり
畑はしずかにねむり
やぶすももの木は白く
またたく星もつめたく
小川はかたくこおる そのとき
ねずみの心をあたためる 雪のぶとう会

 アップルおじさんが咳払いをし、ひげをぴんと伸ばして唱えた詩を合図に、ねずみたちはパーティの準備に取りかかります。戸外では雪の吹き溜まりを掘って、会場のアイスホール作り。家の台所にはスープやポンチ、プディング、パイ、焼きリンゴの香りがたちこめ、お祭り気分が盛り上がります。
 とくに台所の様子は、見ていてしあわせが伝わってきます。おいしいごちそう作りとは、うれしいものだとあらためて実感。細々とした食器棚や暖炉の描写が、英国田園文化のぬくもりそのものです。
 アイスホールで始まったパーティは、興奮のるつぼでした。疲れた子どもたちを家で寝かしつけたら、大人たちは再びホールに戻りダンスに耽ったと言うのですから。昔のエンタテイメントが、ほほえましく感じられました。舞踏会の会場にはヒイラギの実が飾られているので、今頃の季節に向くお話です。12日間続くクリスマスを、一昔前はこんな風に過ごしたのでしょう。
 サイズが小判なのですが、丹精に描かれたイラストを考慮すると大きな判も魅力的だろうと思いました。(asukab)
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