Why? クリスマスの戦争

 ハマスイスラエル軍の戦闘第一報を聞き、なぜ、クリスマス、ハヌカに戦争*1,*2を? 
 2008年最後を締めくくる絵本は『Why?』だ。戦争の愚かさを描く、ロシア人画家による文字なし絵本である。
 穏やかなある日、カエルは石に腰かけ麗しい白い花を手に持ち観賞していた。すると地中からネズミが現れ、白い花がよほど美しく見えたのか、突然カエルに襲いかかり花を奪ってしまった。同じ花がまわりにいくつも咲き乱れているというのに。カエルは驚いたものの、両手を上げてあきれた表情を見せる。奪われた本人は「しかたないなあ」という享受の心境。しかし後方から事態を目撃していたのか、2匹の別のカエルが援護に入り、突風のごとくネズミを追い払った。カエルたちが花をまき散らし喜んでいると、ネズミの乗った長靴戦車が近づいてくる。砲撃開始! カエルたちも負けてはいられない。靴戦車に乗り込み反撃に出る。こうして双方は、報復を繰り返し始めた。なぜ? 何のために? きっと、誰もわからないままに。やられたら、やり返せの感情に流されて。
 作者ポポフは幼少期にナチス侵攻による爆撃を体験している。ヴォルガ川流域に位置するサラトフ市は大学、劇場、音楽学校、美術館を擁する典型的な中央ロシアの古都だった。その美しい街がナチスにより、見る間に破壊された。警報サイレンが鳴り響くたび地下壕に逃げ延びるが、まだ幼かったので、隠れ忍ぶ意味がまったくわからない。廃墟で拾った武器の破片は、友だちの手を吹き飛ばした。
 本書を描き上げた理由は、ただひとつ。無意味な戦争を子どもたちに理解してもらえたら、彼らが平和推進者になってくれるはずだと信じているから。大人にも同時に、戦争の無益を確認して欲しいと願う。
 作者渾身の寓話絵本を開き、米国の蒔いたイスラエルの種の罪深さを恨む。イスラエル寄りのここにいるとイスラム原理主義組織ハマスは鬼畜同然だが、すべてはきれいごと的な私利で誘引した西側に責任がある。イスラエルパレスチナの草の根交流ニュースが、せめてもの慰め。
 小さな光を求めて新年へ。(asukab)
amazon:Nikolai Popov

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