クリスマスの人形たち

 今月はモーツァルトの誕生月ということで、クラシック音楽専門ラジオ局から一曲おきにモーツァルト作品が流れてくる。気分は、軽やかにヨーロッパ。アジアで生まれた器楽が大陸を巡り端っこまでに到達する間、西洋音階が生まれ、音楽はここまで洗練されたということなのか。脳からアルファ派が、たっぷり放たれる。
 『クリスマスの人形たち』も非常に欧風的な絵本。背景にロシア正教会の聖堂が見えるので、舞台は北国ロシアのとある村だろう。人形作りペーチャさんが病気になり、毎年行われているクリスマス公演が危ぶまれる。練習を重ねてきた人形たちはがっかりするが、親切な魔法使いが現れ「真夜中の12時まで」という約束で、人形たちがほんものの人間のように動けるよう魔法をかけた。

たなの上の 人形たちよ
手足を 動かせ 口を きけ
銀(しろがね)の月と ろうそくの
魔法のあかりに てらされて
人形だけで 町へ行き
人形しばいを 魅せてこい

 中心キャラクターは、美しいおどり子人形と、彼女に恋する太鼓たたきとピエロの3人。クリスマス期を舞台にした、ちょっとした恋物語である。バレエ物語のようにも思えた。画家はサンクトペテルブルク出身なので、然り。ロシアの文化首都で伝統的かつ華やかな芸術の影響を受けた感性が、風格のある欧風クリスマス・テイストを伝えている。
 気品にあふれる作品は、前述三者の三角関係がどうなるのか、ちょっと気をもませたり。人間に置き換えてみたら、どんな人たちなのだろうか……とか。でも、すべてはお人形たちのクリスマス夢物語。
 大人へのプレゼントにも向くと思う。特に恋している人に。
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クリスマスの人形たち

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