The Cardboard Piano なかよしふたりのおはなし

 『The Cardboard Piano』と聞いて、そういえばわたしもピアノを習い始めた頃、紙の鍵盤に指を置いてキーの名称を覚える練習をしたっけ……と思い出した。紙の存在はたとえ見立てであっても子ども心をくすぐり、自分が魅せられたのと同様に娘もさっそく作りたいと言い始めている。
 絵本では、女の子のなかよしさんが主人公。ピアノを習い始めたデビーが、親友ティナにもピアノを知って欲しいと願い、黒ペンを使って厚紙製のキーボードをこしらえる。このユニークな創作のきっかけとなった、ピアノの先生から聞いた有名な音楽家の実話が興味深い。ロシアから米国に渡る際、船上で音の出ない見立ての鍵盤を用い、作曲を続けたのだという。彼の名は、セルゲイ・ラフマニノフ。このときできあがった作品が難曲として名高いピアノ協奏曲第3番ニ短調Op.30で、いやあ、もう、この逸話を知っただけで娘といっしょに宙に浮いていた。
 余談になってしまうのだけれど、娘がピアノレッスンの際にいただいてくる月刊小冊子1月号の特集がちょうどラフマニノフで、彼の作品エピソードについて、こちらも夢中になって読んだ。これだけ人を感動させる作曲、演奏を続けた人なので、生き様にだって感動が伴わないはずがない。
 絵本のほうも、さわやかな友情物語として幕を閉じ、「これ、好き」と娘は気に入った様子。夏場に読むのがおすすめかな。ラフマニノフピアノ曲を背景に、また読み返してみたい。
 付属CDがなぜか故障していて聴けなかった……、残念。きっと、ピアノが聴けたはず……?
 追記:DVDでした。そうかな〜と思いながら、CDにしていたのです、お恥ずかしい。すてきな作品です。作者自身のナレーションによる、手作り風アニメーションがすごくいい。自作の曲も紹介され、この親近感からは家とかご近所のかおりが渡ってきます。なかよしふたりの会話が絶妙で、「この年頃の女の子たちってかわいい……」とたまらなく愛しくなりました。娘も大喜び。
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The Cardboard Piano

The Cardboard Piano