Mr. Lincoln's Boys: Being the Mostly True Adventures of Abraham Lincoln's Trouble-Making Sons, Tad and Willie リンカーン・ボーイズの逸話

 『Mr. Lincoln's Boys』は、ホワイト・ハウスで暮らしたリンカーン一家の側面を2人の息子に焦点を当てながら描く。リンカーン大統領の就任が1861年なので、作中では三男ウィリアムが10歳、四男トーマスは7歳。相当のいたずらっ子だったらしい。
 南北戦争勃発を背景に紹介されるエピソードは、北軍義勇兵の服装をした人形ジャックにまつわるもの。ごっこ遊びで、味方を裏切った罰としてジャックを処刑するか否かの場面、膨大な量の職務に追われつつも子ども思いの大統領が弁護士としての力量をのぞかせ、人形に特赦を与えるという内容だ。ここでは、北軍司令官として戦争の重圧に屈しなかったひとつの支えが子どもたちの存在だったのかもしれない、とふと思ったり……。
 しかし、ウィリアムは、ホワイト・ハウス内の汚染水が原因とされる高熱のため11歳で他界。トーマスも父親が暗殺された年から数えて6年後、結核性肺炎で18歳の生涯を閉じた。この事実はストーリーに描かれないが、短命の2人を思うと、絵本での姿がさらにいじらしく感じられる。 
 昨日の絵本*1に続き本作も画家が実力派バグラム・イバトーリーン*2,*3ということで、リアリズムの生きたイラストが美しい。少年2人が少々幼く見えるページもあるけれど、それがまた夭折の事実と重なり憐憫の情を誘っている。
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Mr. Lincoln's Boys

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