We the People: The Story of Our Constitution オバマ大統領就任演説によせて

 1776年7月4日、独立宣言を高らかに謳ったものの、国家としては未熟でその後も問題が絶えなかった若い米国。『We the People: The Story of Our Constitution』は1787年5月、フィラデルフィアに集結した13州の代表が憲法制定を目指し議論する過程を時系列で追い、ドキュメンタリーとして記録する。
 中心人物は、独立戦争で指揮を取り後に初代大統領となるジョージ・ワシントン、学者で81歳の長老ベンジャミン・フランクリン、米国発祥地バージニア州代表ジェームズ・マディソンら。現在の議会、上院、下院、最高裁判所の基礎作りはそれぞれの利害が発生し、生みの苦しみを味わい続けた。
 フランクリンが最後に語った言葉が印象的だ。すべてに賛成できるわけではないが、自分の人生を振り返ってみると、自分が間違っていることもあった。そう考えてみれば、この憲法はよくできている――各州代表者にこう呼びかけて、署名を促すのである。
 憲法制定後も米国は、自由と平等を求めた旅路で紆余曲折をたどる。作者が序文で記すように、奴隷制度撤廃でリンカーン大統領を支持した黒人指導者フレデリック・ネルソン、女性参政権運動家エリザベス・キャディ・スタントン、公民権運動のリーダーであるキング牧師らが存在しなければ、米国憲法は公正を示せなかった。
 そうして200年以上を費やし、今日のこの日とつながるわけだけど、オバマ大統領就任演説では、厳寒のワシントンDCで米史を振り返り、独立戦争時の苦難を語り伝えた言葉がイメージとして広がった。苦境にこそ基本的な価値観に戻り、希望を抱きながら自らの義務を遂行する。米国が変わるには、国民みなの協力、責任が必要なのだと。
 その言葉は前日、キング牧師記念日に語っていたメッセージと重なった。キング牧師の志を継承するのなら、この日は人に尽くしてください、誰かのために社会奉仕をしてください……と呼びかけていた。主人曰く「過去の大統領で、こういう呼びかけをする人はいなかったよ」。
 民主党候補指名争いのときは、政策力に長けるクリントンが優勢ではないかと見ていたのだが、今は違う。やはり人として言葉で人々の心をつかむ人物が求められているのだと断言したい。米国にはこの人が必要だったのだと、来るべきして顕れた人だったのだと、スピーチを聴きながら何度も確信した。
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We the People: The Story of Our Constitution

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