コッコじかんが はじまるよ

 犬猫ワールドにかしましいニワトリコンビが加わって、裏庭模様にいちだんと彩が増しはじめたのが一昨年の秋。何気ないしぐさや動作、反応から彼らの個性をうかがうことが家族みんなの楽しみになり、家庭内コミュニケーションの多くがスクーターやギャビ、デューク、そしてルーシー、ペニーをめぐる事象になった。
 とくにルーシー、ペニーの2羽の愉快なことといったらない。食べ物めがけて駆けめぐり、コッココッコと和やかに庭をお散歩し、たまごを産んだら大騒ぎ。ニワトリがこんなに愉快なキャラクターの持ち主とは知らなかったよ。彼女たちのおかげで暮らしがぐんと豊かになった事実に異論はないのである。
 そのような背景から『コッコじかんがはじまるよ (児童図書館・絵本の部屋)』は、タイトルを見たときから親近感に覆われていた。原書は『Cluck O'clock』ときていて、これに合わせた日本語の「コッコじかん」という洒落た響きにも魅せられる。絵本には最初から最後まで、体内時計というか、お日さま時計の司るまま、一日を長閑に過ごすニワトリたちの姿――。

コッコじかんは、
ニワトリたちの じかんわり。
きょうは どんな いちにち?
 4コッコじ:めざめる
 5コッコじ:あさごはん
 8コッコじ:うんどう……

 でも夜には「キツネじかん」という恐怖の時間もやってくるのだけど。一羽一羽にジェシーとか、マージとか、やはり名前がついていて、うちのルーシー、ペニーとまるで一緒! 生命のしあわせを描くほのぼのとした描写が、裏庭の物語と重なり瞬く間に特別な一冊になったのだ。
 暮らしを幸福色に染めてくれたルーシーが昨日の朝、何の前触れもなく昇天した。フレンドリーで食いしん坊で、警戒心の強いペニーよりずっと愛嬌のあったルーシーだけれども、その能天気な性格が命取りになったのか。朝8時前、タカに襲われ、無残な姿になっていたそうだ。処理をした主人が夕刻、教えてくれた。息子は帰宅後、ルーシーの見えないことが気になったのか、寒気にもかかわらずずっと裏庭に出ていた。その心配そうな表情が、今となってはさらに哀しく映る。
 ルーシー、楽しい思い出をありがとう。シナモンカラーのたまご、ほんとうにきれいだった。...RIP...

コッコじかんがはじまるよ (児童図書館・絵本の部屋)

コッコじかんがはじまるよ (児童図書館・絵本の部屋)